珊瑚(サンゴ)の死骸でできた半島

砂に見えるのは、全てサンゴの死骸

屋久島の3泊4日の縦走が終わった次の日、朝からバケツをひっくり返したような土砂降りの大雨が、大地を叩いていた。下山後泊まったゲストハウスに、昨日から一緒になった、もう既に飲み友達とも言える65歳の元気なおっちゃんと僕は、今日1日をかけて島一周の自転車の旅に出る予定だったのにである。睡眠時間が昔から少なく、「寝るのなんて4時間で十分だ!」と豪語する彼(ビジネスの経験の豊富な彼は、その世界で成果を出すには、24時間のうちどれだけ活動できるかが鍵だと言っていた。)は、早朝から続く土砂降りの雨にすっかり心を折られて(昨日から雨の予報を知ってやめるつもりだったが、もし晴れたらという微かな希望をいだいていた。はずだ)、たばこを吸って、スマホの中でスロットを回していた。その背中はすっかりいじけているようにしか見えない。そんな彼を知り目に、僕は今より少し雨が弱くなるようなことがあれば、濡れてもいいから出発しようと覚悟を決めていた。だって、屋久島に来る機会なんてめったに無いことで、次なんていつ来れるかわからない。7年前から夢見ていた屋久島。6泊7日の屋久島旅行、少しの時間も無駄にはできない。諦めるという判断は最初からなかった。彼から、この雨の中自転車で行くなんて正気の沙汰だ。アホだ。危険だ。西部林道は滑るぞ~。と、冗談半分に脅されながら雨脚が弱まるのを、昨日、島唯一の大型スーパー(ドラッグストア)、知る人ぞ知る”ドラモリ”で買った冷凍ほうれん草ベーコン炒めを食べながら、静かな気持ちで待った。そして徐々に弱まる雨脚。姉さんに雨雲レーダーを見せてもらうと、今いる小瀬田、宮之浦以外は驚くことに晴れているみたいだ。それも後押しとなり、小雨降る中、カッパと縦走でびしょ濡れとなった登山靴を履いて、昨日レンタルしたブリジストンのギヤ3×8のスーパークロスバイクにまたがり出発する。もちろんヘルメットを被って。そうして路面に気をつけてスピードを抑えてペダルを漕いでいると、宮之浦に着く前には雨が上がり、一周することを決めた僕を祝福するように、青空が広がってきた。土砂降りから一転した快晴が、とても心地よかった。8時間後島一周を終え自転車を返し、どこか誇らしげな表情でバスに乗って帰ってきた僕を、彼は満面の笑みで「よくやったな」と感嘆を含んだ声で迎えてくれた。バスの時刻と、僕が一周にかかる時間を予想して、バス前方の扉がちょうど開く場所に待っていた彼に僕は驚き、そして温かい気持ちになった。そして宿に帰ると二晩連続の飲み会が始まったのだった。父親ほど歳の離れた彼とは大いに笑い、大いに語り合った。そして息子ほど歳の離れた僕に彼は、大事なことを惜しみなく授けてくれたように思う。島での出会いは人も、木々も、滝も、自然もどれも代えがたい素晴らしいものだった。その出会いの一つが彼だった。

サンゴの話はまた今度にしよう。

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この記事を書いた人

Hikers Guild の代表です。
自然の中を歩くことを何よりも愛しています。
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